受験数学における包絡線の導出とその意味についての考察
包絡線とは何か?wikipediaには以下のように包絡線について書かれていた。
包絡線(ほうらくせん、envelope)とは、与えられた曲線族と接線を共有する曲線、すなわち与えられた(一般には無限個の)全ての曲線たちに接するような曲線のことである。
まあ、意味はわかる。だが、受験数学において求めるとなると話は変わってくる。ファクシミリ法と呼ばれる方法も包絡線を求めているのとは大差ない。
一般的な難関校受験生が行う考え方は下の通りであろう。
ある関数 f(x,y,t)=0・・・(*)がxy平面上において t∈T を満たしながら変化するとき、f(x,y,t)=0 が動いた際に描く領域を g(x,y)≧0 でxy平面上に示せるとする。このとき、g(x,y)≧0 ・・・(**) とする。
ここで(**)とは、(*)がある(x,y) において t∈T を満たすt を代入し(*)が成立するならば、その(x,y) が(**)内部に存在するような領域。
すなわち (*)⇔F(t) とし、xおよびyを定数とみなしてF(t)=0となるt がt∈T に存在する条件。これがg(x,y)≧0 と同値である。
日本語にするとなんとも分かりにくい。要は、f(x,y,t)=0をx,yは定数であるtの関数とみて解き、そのときtがある値域に限定された変数ならばその値域に解が存在する条件、すなわち存在条件を考える。その存在条件こそが、f(x,y,t)=0がある値域内でtが変化して動く際に(x,y)平面に描く領域に一致する。ということだ。
なので、受験生はxおよびyを定数とみなし、tの関数として解いて出た答えを範囲とし、その境界の関数を包絡線と覚えれば良い。
問題はこの先にある。
言わば、受験テクニック的なもので
f(x,y,t)=0 を t の関数とみなし、t で微分。出てきた関数をf'(t)=0 とすれば、f(x,y,t)=0 と f'(t)=0 の二式を連立しt を消去すると包絡線 g(x,y)=0 が得られる。
というものだ。なんで?という感じである。偏微分だとかの証明を使ってくれているサイトも見かけているが、偏微分を知らないとよくわからない。なぜこのような関数が出てくるのか。それを日本語のみで可能な限り僕の分かる範囲で説明してみる。
まず、そもそもf(x,y,t)=0 とはなんなのか?これはxy平面上においては領域のようなものを表している。そしてこの領域の境界線を表したものこそが g(x,y)=0 。包絡線である。そして、f(x,y,t)=0 をt で微分するとはなんなのか?つまりは dx/dt および dy/dt がともに0であるということ。すなわち、f(x,y,t)=0 という領域内の点の集合に強引にt に依らない関数を生み出すための条件を付与したと考えられる。するとここで疑問が生まれる。「 f(x,y,t)=0 とf'(t)=0 の二式を連立したら領域f(x,y,t)=0 に含まれ得る無数の関数が出てくるのではないか? 」すなわち、領域f(x,y,t)=0 に内にはいくらでも関数描けるよね?ということである。僕自身、最初にここで「は?」となった。では、なぜ都合よく包絡線のみが導出されるのか?それは恐らく以下のような理由である。
f(x,y,t)=0 ⇔G(x,y)=F(t) とする。するとG(x,y) はxy平面において領域f(x,y,t)=0 領域である。すると領域内の1点はF(t) に依存する。すなわちt に依存する。ここで、あるt における関数f(x,y,t)=0 (∵ t が定数なら1つの関数となる)は包絡線に接する。(これは包絡線の定義)すなわち、あるt によって定まるG(x,y)=F(t) という(x,y) の集合の中で包絡線g(x,y)=0 上に存在するのは1点に限られる。(もしかしたら2点で接する場合も存在する?) ここで、f'(t)=0 という条件(t に依らないという条件) を同値変形して出てくる関数は t=〜 と変形できるだろう。このことより、f'(t)=0 を同値変形して出てきた関数 t=〜 はt と1対1対応している。ここで、f(x,y,t)=0 の領域内に全ての点で、あるt におけるf(x,y,t)=0 が1点のみで交わるような曲線は1つしか描けない(多分)。すなわち、包絡線のみ。よって包絡線が導かれる。
僕はこのように解釈した。図(手書きでごめんなさい)を交えると以下の画像のようになる。
(存在条件についての話はこちらへどうぞ。 受験数学における存在条件と包絡線の関係 - 趣味的受験数学 )
2016/11/11更新